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197号1面より(2007/10/1発行) カヌー部
稲川・込茶 全国制覇

 {K-2}千㍍で主将・主務ペアの稲川昴文(文4)、込茶康太(総4)組が、全国の頂点に立った。日本一のチームを目指し続けて挑んだ夏。2人の勇姿は、関学カヌー部史に深く刻み込まれた。


稲川・込茶.JPG  風が変わった。全日本インカレ{K-2}千㍍決勝。レース前の込茶の頭に、このとき一つの思いがよぎった。「ひょっとしたら勝てるかもしれない」。彼のこの小さな興奮は、後に現実のものとなった。

男たちの夏

 先に行われた関西インカレは、関学の独り舞台だった。この大会で過去5年に渡って立命大に王座を明け渡し、2位に甘んじてきた関学。だが朝から晩までカヌーに明け暮れる練習の中で、男たちは勝利への確信を深めていた。ジュニア(大学入学後、競技を始めて1年目の選手)勢や、個人3種目を制してMVPを受賞した副将・田寺俊之(総4)の活躍が光り、例年以上に多くの優勝者を輩出。圧倒的な強さで立命大から王座を奪い、関西制覇を成し遂げた。

 団体では最高の結果を手にした男たち。6年ぶりに関西を制したことでチームの勢いは増した。しかしその一方で、稲川と込茶には悔いもあった。ともに個人種目では、目標の1着になれなかったからだ。次こそは絶対に勝つ。2人はリベンジを誓った。

 そしていよいよインカレを迎える。歓喜の瞬間は4日目、{K-2}千㍍で訪れた。このレースで優勝するため、風向きと波の様子に応じてペース配分を考え、何十種類という戦術を立ててきた稲川と込茶。そのなかでも2人が得意とするのは追い風でのレースである。昨年のレースが追い風だったこともあり、2人は特にこの風を想定した練習を積んできた。だが運命は時として皮肉なものである。今年の予選では向かい風が吹いていたのだ。稲川と込茶に動揺が走る。だが決勝を迎えた瞬間、奇跡が起こった。あれほど向かって吹いていた風が、突然追い風に変わったのだ。後に込茶はこの風を「神風」と振り返る。コンディションは最高。練習量には絶対的な自信がある。あとは互いを信じて漕ぐだけだった。

 スタートと同時に、2人は全力で漕いだ。そして1コースの稲川・込茶組の艇と、6コースの大正大の艇が競ったままゴールイン。目測ではほぼ同時だった。写真判定が行なわれ、結果がアナウンスで伝えられる。結果は0,09秒差で稲川・込茶組の勝利だった。喜びから、その場に泣き崩れる込茶。側にいた部員たちもまた、嬉しさのあまり涙が止まらなかった。自分以上に喜んでくれる仲間がいる。カヌーをやっていてよかったと思った瞬間だった。

 そして、2人の残る目標はチームが日本一になること。最終日を前に1位の大正大と5ポイント差の2位につけている関学は、悲願の逆転優勝を狙う。4日目の稲川・込茶組の優勝もあり、誰もが日本一を確信していた。だが最終日のレースで不運が重なり、関学は3位という無念の結果に終わってしまう。個人では優勝したものの、表彰式での稲川と込茶に笑顔はなかった。

勝ちたかった

 「ずっと日本一の言葉が離れなかった」と主将になってからの1年を振り返る稲川。大げさではなく本当に純粋に、今年の夏に人生をかけていた。それだけにチームが3位に終わった夏を振り返り、「悔しい」と唇をかんだ。心にぽっかり穴が開いたようで、まだ気持ちの整理ができていない。あんなに毎日乗っていたカヌーにも、あれ以来一度も乗っていない。だが稲川、そしてチームの熱い夏はしっかりと、見るものの心に焼き付けられた。夏が来れば、きっと思い出す。カヌーに全てをささげた、あの男たちのことを。彼らの熱い夏が色あせることはない。   (藤本加奈子)